HANG LOOSE ≫Megumu Sagisawa

『ハング・ルース』
鷺沢 萠 著
河出書房新社

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この間何気なく本の検索をしていて驚いた。
発行から一年くらいしか経っていないであろう本が「入手不可」となっている。
・・・けっこう人気どころの著者の本だったのだけれど・・・

そりゃジャンルによってなじみにくいこともあるだろうし、出版社さんの事情もあるでしょう。
しかし・・・早すぎるよ、こんだけ本あって見つけるまでに時間かかったり、出た瞬間に対応できないことだってある。なのに読もうと思ったときにはない。
こちらの感覚では10年でも短いと思うけどそれは仕方ないとして、5年、いやせめて3年くらいは時間がほしいというのが本音。

そんななか、しぶとく探しまわって文庫本を一冊。
私はどちらかといえば作家さんで選ぶというよりは本の内容で決めるので、基本は現地探索になります。・・・前よりは事前調査してますが。
最近になって書かれるかたの文章でも相性があるようだと気づき、いくらか作家さん別に関心があったりもします。

鷺沢さんの本は、数としては読めていないのですが・・・すごく、密度が濃い。
誰しもこういうことがあるんだけど言語として説明しがたい部分ってありますよね。
それが鷺沢さんの本にはあるような気がするなあと感じたのがきっかけ。
「何?」って訊かれてもこまるんだけど、私にはそう思えるんです。

本作も鷺沢さんモード全開っぽい作品だと思いましたが、これも受け取る人しだいなので自由に読んでみてください。
無論、鷺沢さんのみているもの、考えていること、思うことは私とは異なるはずです。
でも人というのは・・・どんなに環境や境遇がちがっても“かすめる”場処があるんじゃないかとも感じるんです、かたちがほんのすこしちがう、というだけで。

この物語に出てくる人々は、表面上はかけはなれているように思われる、けど、「生きている」状態においては何ら自分と変わんないじゃん・・・
そう思えて、いとおしさのようなものをおぼえた。
女性側の心理と男性側の心理に立って書かれている、とも受け取れる。
性差というものは確実にありはしますが・・・それだけじゃ理解できんこともいっぱいあるよな。事実、自身に照らして考えると、全部じゃないけど心理的にはどっちの気持ちもわかるもん。

主人公(あえてここでは女性のほうを示しますが)の思いのなかに、もうちょっと勉強しとけば言葉にしていろんなことも伝えられたのになあ、といった嘆きのようなものが含まれてる。~けどさあ、勉強ってったって頭に詰めてりゃいいってもんでもないぞー。たしかに言葉しってれば項目としての伝達はできるけど、気持ちは・・・言葉があっても伝えにくいもんだと思う。それにさ、身に付かなきゃ本質的な勉強になりにくいんだわ。いろんなかたちあるけど・・・あんたも充分、勉強してっと思うよ。私がしらないこともたくさん体験してるしね~そういう話をしてみたくなった。
日々を、精一杯生きる姿勢には変わりはない。ごまかさずにいることがどれほどつらく、苦しいことか私なりにしっている。だからこそ、どこで抜いてわずかながらでも心安らぐことがあることもわかるようになるのだと。

鷺沢さんの作品を読んでいて思うのはもわっとしたものではあるけれど、なんだかいいなあと感じ・・・それによってもうちょいがんばれるかな?と。ぼんやりと、だけどね。
自然と微笑してるんです、適度に(?)ほぐれているというか・・・
ありがとね、鷺沢さん。私もわりと馬鹿だな~って思うこと多いけど、いまだからいえる。
それでも私は私で、テンポずれててもとろくても、あまのじゃくでもカッコよくなくてもまあまあいい奴じゃん!・・・けっこー気に入ってます。