海辺の扉

きょうは、清明。天(そら)が澄みわたる・・・・・・

そのことに気づくには、暗雲や嵐をこえていかなくてはならない。

綺麗なものを“きれい”だと感じるこころを、いつしかうしなってしまうんですね。

上・下巻に分かれている『海辺の扉』(宮本輝 著:角川文庫)のことを知ったのは、ついこの間。鷺沢萠さんの解説を読みたいな、と思い本屋さんへ走りました。

刊行されたのはずいぶん前なのに、不思議といま自分が抱えている課題に密接にかかわっている気がしました。・・・人とかかわることで傷つく自分、そして自分も誰かを傷つけている・・・かかわらなければこんなに苦しいことはない、痛くもない、それでもかかわらなくては生きていけない、かかわりたい・・・矛盾した思いのなかで日々を過ごしている。

それはもしかすると本能的なものに反応するのかもしれない、とこのごろよく思うこと。

人が誰かに、何かにであうとき、どこかに惹かれるものがあるのだと。ことばではうまくいえないのだけど、生じるべくして生じている、そんなふうに感じるのです。・・・これが十年前だったなら、五年前だったなら気づくことはなかった、理解できなかった、というような。そこをたどってきたからこそ「わかる」感覚というのがあるんじゃないだろうか?・・・あくまでも一個人としての考えです。特に分野として学んでいるのでも能力としてもっているのでもありません。

ある時期から私はよく、逢うことのかなわない、逢えるはずのないひとたちに逢いたいと感じるようになっていました。このことが、『海辺の扉』の鍵にもなっているようです。他社からの文庫版も出ているので読まれたかたもいらっしゃるかな・・・?

あなたがもう一度逢いたいひとは誰ですか?

鷺沢萠さんへ ありがとう

 わたしはあなたに逢いたかった・・・』