わたしが小さかったころ、藤の花も藤棚も、すごく高い場処にあった。
けれど幼心にもそれはとてつもなく美しく、異界にいるような心持ちだったとおもう。
通っていた幼稚園(・・・だったと記憶している)では毎年、すばらしい藤の花が咲いていた。
さすがに手をのばして届くものでもなかったのでふつうなら眺めているだけだったのだが、幸い遊具のそばが藤棚だったためそこにのぼればしっかりとふれることができた。
“何でこんなかたちなんだろう?”
当時の感覚では地面にみえている草花が植物としての認識で、桜のような木はともかく、上から花が垂れている、しかもかなり特殊な形状で。・・・そのことがたまらなく不思議だったのかもしれない。
しかしその光景はずっと心にのこっている・・・・・・
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春を感じる景色というのはそれぞれにあると思いますが、わたしははじめに梅、菜の花、たんぽぽあたりから桜・・・かな。そのあとが藤。
藤の花がすきなのはあのやわらかなかたちもありますがたぶん、・・・色ですね。
むらさき色、といってしまえばそうだけど、厳密にはあらわしかたも色々だと。
ファッション業界や染色の世界でも微妙に呼び名が異なるのでいろんな場処で考えさせられることが多い。まさに多種多様。
染色ではおそらく藤も使用されるので藤色、というのはあるんじゃないかな?
藤といえばあのかたちですから、かんざしのデザインもあるだろうし、着物の柄、・・・それから家紋、などもあるのでは。
ちなみに鉱石ではその色合いにはタンザナイト・クンツアイト、といったものがあるかな?
こちらも自然色、天然の色がでるから実際にはそういう感じにみえる、ということでひとつずつ、異なった色彩を有しているのだと思います。
ちらとみただけなのでおぼえていないのだけど、広くみると樹齢何年という寿命のながい藤も存在するようです。花の房もとても大きな(ながい)ものがありました。
樹木が風にゆれる雰囲気もすきですが、藤の房がそよぐ風情もよいものです。
・・・そこに、藤の精がたたずんでいるかも、しれませんね。
何年たっても藤の花のそばは、心安らぐ場処のままです。