『一人ではない』
2011年3月18日の日経新聞文化欄より~神戸市在住の小説家・高嶋哲夫さんのお話から印象深い部分を転記させていただきます。
阪神・淡路大震災のときはモノに対する空しさを強く感じた。家は倒壊し、モノは壊れる。なにより心の支えとなったのは、人との絆を感じたときだ。
遠い地に住む忘れかけていた友人からの安否を気遣う電話に感動し、バス停で子供やお年寄りの手を取って先に乗せる、そんなささやかな行為にさえ胸が詰まった。
そしてそれは、今では世界的な広がりで伝わってくる。インターネットをのぞいてみると、こんな趣旨のメッセージが載っている。
「日本に知り合いはいないが、大変な衝撃を受けている。ニュースを見ているだけで悲しく、生きていることがどんなに幸運なのかと考えさせられる」
この声は、英国のかたのものです。ほかにも多くの声が
「日本人は勇気ある人々だ。常に自然の脅威と闘ってきた。彼らの信念と意志はどんなことがあっても挫かれはしない」
「日本とその品行正しい勤勉な人々を神が守ってくれますように。きっと打ち勝てるよ」
「あなたは一人じゃない。私たちが心を寄せ、そうして祈るから」
「涙が止まらない」
全文ではないので高嶋さんの想いが正確に届けられないかもしれませんが、阪神・淡路大震災を体験し、向き合い、乗り越えてきたかただからこそ語れる言葉もきっとあり・・・そのなかに私自身の、言葉にできない想いもこめながらここに書かせていただいています。
そう、僕も涙が止まらなくなった。
世界が日本の被災地を見守っている。驚くべき悲しみの前に唯一、心温まる思いだ。
地震は非情だ。揺れで人と建物を押しつぶし、生き残った人も裸で路上に放り出す。しかし、家族を亡くし、友人を亡くし、家や財産をなくした人も、生き続けなければならない。
でも、皆さんは一人ではない。日本中の目が、世界中の目が見守っている。どうか、勇気を持って生き続けてほしいと願う。
ふだんからパソコンに向かう時間を制約しながらでないと扱えず、報道の映像などからショック症状が発生したためインターネットからの情報を限られた部分でしか見られていませんでした。そんななかの、こうした声・・・日本という場処を、そこに生きる人々をこんなふうに見ていてくれたのか、そして、見ていてくれるのか・・・そう思うとただ記事を読んで、かみしめるだけではいけない気がしたのです。
阪神・淡路大震災のときも友人や知人と連絡が取れなくて不安な日々があった・・・
いまもそうです。だけど、もっとたくさんの人がさまざまな想いのなかで生きているから信じて待つしかない。どうか、みんなの心や体が守られるように、おだやかな時間が戻ってくるように
最後に、高嶋さんが一番感動した言葉を
「世界の人々が考え直すときが来た。殺し合いに力を使うのでなく、生き残った人々に心を伝えることこそ癒しの道だ」
「人種、宗教、国籍を超えて、人であることに変わりはない。目を覚まそう。自然を前に放り出されたら、殺し合いなんてしていられないんだから。お互いの痛みを和らげることから始めよう」