海を感じなさい。

胎児のころの記憶を有している人や、
ふつうは記憶されにくい小さなころの記憶を
持っている人がいるときく。

そうしたものを知りたい気持ちはあっても、
私自身にそれはのこっていないけれど・・・

なぜかあるときから、知るはずのない光景が
浮かんだり、誰かの感情がまるで自分のものの
ように強烈に流れ込んだり、ということが
起こるようになった。

気のせい、というにはリアルさがありすぎるから
何なのだろうとこわくなったりもするのだけど。

・・・そんなおり。

生まれた日の記憶なんてまさか・・・・・・
と君は思うかもしれない。
しかし、想像の翼を広げれば、
リアルな記憶がまぶたの裏によみがえる。

そこにいるのが私なのか、
私にかかわる誰かなのかはわからない。
ただ、間違いなくみんなそうして・・・
父や母や、祖父や祖母、
まわりの人たちに見守られ、
愛情を受けて生まれてきたはずなのです。

疲れたら休みなさい。
山の懐に抱かれて休みなさい。
疲れたあとの休息なら、誰もとがめたりはしない。
眠りはつねに深くとりなさい。
そして翌朝、大気を思いっきり吸い込んで
一歩を踏み出すのだ。

苦しみに、悲しみに、
痛みに耐えがたくなったら、
静かな時間をもってください。

あなたの大切な人はどんなひとですか?

大好きなことってどんなこと?

焦ることはない。
道が険しければ、回り道をしたっていい。
ときには引き返す勇気も必要だろう。

あなたがすごく嬉しかったことって
なんだろう?

生まれて成長する過程で出会った人のなかには
あなたの存在にしあわせを感じ、
心のよりどころとしている人もいます。

そしてそれは・・・これからゆっくりであっても
確実に増えていくのです。

自分の身体に宿る命は、
他者と支え合い、共有された命なのだ。

あなたのなかにはすでに、いくつもの命が
宿っています。
だからどうか、その灯を消さないでください。
こわさないでください。

目を閉じて、桜の木に聴いてみなさい。
二つにして一つの、命のつながりを。

~『海を感じなさい。 次の世代を生きる君たちへ』

渡辺憲司 著 朝日新聞出版

※水色の箇所は引用


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あなたに宿る 幾多の命を 感じてほしい