羊と鋼の森

なぜだか心が騒いだ。

ふだんならほとんど気にも留めない書店の、おすすめというのか
・・・・・・表紙絵と、タイトル。


羊と鋼って、やわらかいものとかたいものの対比、だろうか、
それにしても森って??
エスチョンを飛ばしつつ羊が点々とみえるその絵に引っぱられて
しまい。


概要からピアノ、音、調律にかかわる内容だと読み取れたのと、
じんわりとなにかが働きかける、・・・私の奥深くを揺さぶる作品の
ように思えて・・・

なつかしい故郷にかえった、ひそやかな悦びをかみしめるごとく。

読み進めたい想いと味わいたい氣持ちの間でゆらゆら・・・



ぱらぱらとページをめくるだけでもひらいた場処にはメッセージが
潜んでいる、隠れている。それはあたかも読み手にとっては
宝探し、もしくは置き去りにしてきたものの、再発見。

なのでどうやったって、歩みはのろくなり、紙と筆が必需品になる。


・・・こぼれてしまうとしても、できるかぎり大切なことを、
大切なものを、すくいとれるよう・・・私は今、なにを感じている?
それをどのようにとらえている?これが意味するものは
なんだろうか。


小説は頻繁に読むほうではないし、書籍全般でもいちいち
立ち止まりはしない。それが何故か、これほど聞き耳を
たててしまっている。




昔、私は音楽教室に通っていた。
私の意思ではなく、よくある情操教育の一環、あとは身体をきたえる
意図があったらしい。
その流れでピアノをやることにもなったのだが、本人は歌謡曲
アニメソングばかり弾いていて基礎練習もおぼつかなく、欲もない
(?)ためにクラシックの大曲などは満足に弾けなかった。

ただ、音楽にかかわっていなければ得ることのなかったものは、
意識するしないにかかわらず、心身に刻まれ、現在の自分を形成
している、と思う。

それに・・・・・・
ピアノの音色はうつくしいな、といまでも。

調律前と後で、微妙に音の色彩やかろやかさ、手ざわりが変化する
のがすきだった。


ささいな、そうした風景がよみがえり。



思い返せばつらい出来事だらけ、にもみえるけど、
ピアノにふれる、音楽の扉をひらくことがなかったら・・・
ここにこうして、立っていることはなかったかもしれない。

この物語に出逢うことも、なにかを、だれかを
とてつもなく愛しいと観ずることも。


私自身、という森のなかへ。

入口付近なのか、あるいは最も深くて暗い、
そこを抜ければ光のさすあらたな局面の寸前か、

いずれにせよ、みえそうでみえない道を。


もしかすると、同時にそれは、
愛するなにかをもとめ、しっていく旅。





鬱蒼とした森へ足を踏み入れてしまった怖さ


それでも引き返すつもりはないのだ


羊と鋼の森』 より  

宮下奈都 著  文藝春秋






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