無口な雪

作家の浅田次郎さんが、作家にはしゃべるように書く人としゃべらないから書く人がいる、というようなことをおっしゃっていました。

それは、作家にかぎったことではなく、人にはいろんな側面があります。生きていくうえで、自分をアピールすることは必要です。一般に、明るい人、おしゃべりがうまい人、華やかな人が良しとされる、特に女性の場合・・・と早くに感じていた私は深刻に悩んでいました。けれど、そうした人たちにも別の側面があり、一見しただけでは分からない、また、人というのは面白いもので、意外なところでつながっていたりもします。相性、バランスがあるのです。そのことに気づきはじめてから、仮に暗い、あまり話が上手くない、おもしろくないと思われたとしても怯えなくていいんじゃないだろうかと考えるようになりました。

たまにスイッチが入ってしまうとだーっとテンションが上がるのですが、総じてしゃべれません。子どものころより気負い(?)はなくなりましたが、いまだに『何しゃべったらいいんだろう?』、『つまんないって思われてないかな?』・・・と緊張するのです。それでも気にしてたらしゃべれないし、言葉にしなければ伝えられないこともある、だから変、に映ってもできるだけ言葉にするよう心がけてます。近くにいれば仕草や表情で伝わる気持ちもあるのでしょうが・・・一度、本当に声がでなくなってしまったとき~おそらく、精神的なものから~すべての望みが失われた気がしたけれど、そうなって初めて、大切な想いがよみがえりました。すぐにかたちにならなくても、ちゃんと伝えないと、言葉にしないと一生後悔することになる。それだけは嫌だった。

雪は、音を吸収するのだと聞いた記憶があります。小さいときにはめったに見ませんでしたが、最近はよく降るようになったようです。

そんなしずけさのなかで、そっと耳をすましてみませんか?

ふだんはきこえない『声』がささやきかけるかもしれません。

手紙や葉書にことばをしたためているとき、私はそうした感触があります。

しばらく寒さは続きそうです。くれぐれもおからだに気をつけてください。